イタリアの深い工芸を知る一期一会の旅──Vetrinamiaと、心を揺さぶるデザイナーたちの物語

日本語訳：

偶然の出会いから始まった、イタリアの深いクラフツマンシップへの旅：Vetrinamiaと心を打つデザイナーたちの物語

掲載元：Elle Taiwan、2025年8月7日

リンク：https://www.elle.com/tw/fashion/flash/a65393383/vetrinamia/

 

運命に導かれたような出会いがあります。

最近「イタリアのデザイナーブランド」を探していた際、偶然に質感に満ちた未知のプラットフォーム、Vetrinamiaに触れました。そこに並ぶひとつひとつのバッグは、騒ぎ立てることなく語るような静かな優雅さを湛え、控えめながら確かな自信を秘めた言葉のようで、私の編集人生における珍しい驚きの瞬間となりました。

代表作のひとつであるバッグ《Beaumont》について話が及ぶと、デザイナーの目にほんのりと誇らしさが浮かびました。彼は微笑みながら、バッグ中央にあしらわれたローズゴールドの留め具が誕生するまでの物語を語ってくれました。最初の手描きスケッチから始まり、一本一本線を描き起こし、蝋を用いた手作業による原型彫刻、型取り、研磨という過程を経て、ようやくバッグの中心に美しく留められるに至ったのです。私がそのローズゴールドの金具に直接触れたとき、その豊かな立体感としっかりとした重みを感じました。指先を通じて、幾重にも及ぶ手間の末に到達した精緻さと確かさが伝わり、控えめながらも上質な輝きが放たれていました。「台湾の女性におすすめしたいバッグはどれですか？」と尋ねると、彼は少し眉をひそめ、わずかに困ったような笑みを浮かべてこう答えました。「どれも私の大切な作品なので、本当に選ぶのが難しいですね。」。また少ししたら彼は「《Biscuit》は単なるアクセサリーではありません。私自身の物語の一部を宿しているのです。そして、あなたの物語の一部にもなってくれたらと願っています。」と語ってくれました。 FRÉDÉRIC LESELLIERの作品は、単に彼自身の物語の延長ではなく、私たち一人ひとりがそれを手にすることで、自らの旅路と記憶を綴るきっかけをも与えてくれる存在のように感じられました。

フレデリック・ルセリエを発見する

 

芸術との情熱的な対話──GAMBERINI

次に深く対話を交わしたのは、思わず歩みを緩めてじっくりと味わいたくなるようなブランド──GAMBERINIでした。その日、画面越しに創業者であるイレニア·ガンベリーニと初めて顔を合わせた瞬間、彼女の瞳がまるで物語を語っているように見えたのを今でも覚えています。とりわけ、彼女が微笑んだときにふわりと上がる目尻には、イタリアという国との深い絆が静かに滲んでいるようでした。Ileniaは「ヨーロッパ最古の大学の一つ」にして「ヨーロッパ大学の母」とも称されるボローニャ大学を卒業しており、そこで築かれた豊かな芸術的·歴史的素養が、彼女の創作に確かな土台を与えています。Ileniaは私に、GAMBERINI誕生の原点について語ってくれました。

それは、彼女が抱くイタリアの伝統的な浮き彫り細工のジュエリー装飾（カメオ）への深い愛情から始まったのです。カメオ背景には、母から娘へと世代を超えて受け継がれる記憶と愛が込められており、それこそが彼女の創作の出発点でした。この話をするときのIleniaの眼差しには、どこか優しさを含んだ意志の強さが宿っていたように見えました。まるで彼女のバッグには、心の奥深くにある家族への想いが、一針一針丁寧に織り込まれているかのようでした。

 

 

初めて目にしたとき、私はその精神的な力強さと細部に宿る美しさに驚かされました。
よく見ると、楕円形の装飾プレートの中には、豊穣を象徴する麦の穂のモチーフが、繊細な金糸で刺繍されており、そこには単なる芸術的感性だけでなく、日常と深く結びついた余韻が感じられました。その後、私は指先でバッグの表面にそっと触れました。滑らかで繊細な質感の中に、どこかぬくもりを帯びた空気感が漂い、さらにほんのりと香る革の匂いからは、時間をかけて丁寧に作り上げられた工程の名残までもが伝わってきました。そして何より驚かされたのは、彼女が使用する革や金属パーツを自ら厳選·開発しているというこだわりでした。黄銅製の金具に関しても、自ら金型を起こして製作しているのです。

 

このほとんど執念にも近いこだわりこそが、GAMBERINI を唯一無二の存在へと押し上げた要因でもあります。しかし、私が本当に魅了されたのは、象徴的な刺繍モチーフだけではありませんでした。バッグ本体の曲線を描く輪郭や、計算されたプロポーションの張りには、声高に語ることのない、しかし確かな存在感を放つ優雅さが宿っており、それは日々の暮らしの中にそっと寄り添うような美しさでもあります。そしてそれは、彼女が対話の中で繰り返し強調していた言葉と重なります。「すべてのバッグは、単なる商品ではなく、文化の継承であり、人と人とをつなぐものなのです。」

ガンベリーニ バッグを発見する

 

シチリアの魂と記憶に寄り添う DADAPUTÌA

もし GAMBERINI が芸術文化との深い対話であるとすれば、その次に行った DADAPUTÌA のデザイナー、Ernesto Graditi氏とFrancesca Ferrara氏との通話は、彼らがいかにして DADAPUTÌA を通じて、愛する故郷シチリア島への深い想いを表現しているかを、私にありありと感じさせるものでした。通話当日、Francescaさんは太陽のような明るい笑顔をたたえながら、軽快ながらも意味の深い話しぶりで、一方のErnestoさんは静かで揺るぎない眼差しで、まるで言葉がゆっくりと熟成されているかのような佇まいでした。故郷の話題になると、二人の声のトーンは自然と柔らかくなり、心の奥にある懐かしい風景を思い出すかのような語り口に変わりました。

ブランド名「DADAPUTÌA」は、「DADA」と「PUTÌA」という二つの言葉から成り立っています。
「DADA」は Design（デザイン）、Art（アート）、Dress（服飾）、Architecture（建築） の頭文字を取ったもので、多様な側面を象徴しています。一方の「PUTÌA」は、シチリア語で地域に根ざした小さな商店を意味する言葉です。このようなネーミングは、ブランドの輪郭を明確に描き出しており、現代的な視点を通して故郷の物語を語るという姿勢を体現しています。両デザイナーはともに建築を専門とする経歴を持ち、彼らの手によるバッグは、まるでシチリア島そのものの建築を凝縮したかのような作品です。かつてこの島は、ギリシャ、ローマ、ビザンツ、アラブ、ノルマン人といった多様な文化による支配を受けてきました。その歴史を受け、DADAPUTÌA のデザインには、イスラム建築の幾何学模様のディテール、ゴシック建築の尖塔アーチの曲線、さらにはローマ建築のアーチ構造の比率までもが現代的な感覚で落とし込まれており、唯一無二のバッグデザインへと昇華されています。

私は今でも覚えています。あの一瞬、鼻先に革が放つ自然な香りを感じ、指が金属のパーツに触れ、その驚くべき光沢と確かな質感を実感しました。まさにそれがイタリア職人技の魂そのものでした。そしてブランドのクラシックバッグであるFuturistic Kelly Bagは、デザイナーの言葉で言うところのシチリアを具現化したものです。光と影が切り取るかのように鋭いバッグの輪郭は、建築的な張りを持ちつつ、細部にはイタリア式の優雅さを秘めています。イタリア最高級のカーフレザーを選び、表面は浮き彫りのように繊細な立体キルティングが施され、幾何学的な金属装飾と18Kメッキの金具があしらわれており、一見控えめながらも細部にこだわりが散りばめられています。

短い通話はおそらくデザイナーたちにとって物足りなかったのでしょう。間もなく彼らから一通の手紙が届きました。その手紙にはブランドへの深い愛情があふれており、その中のこの言葉が私の心に深く刻まれました。「ファッションは異なる世界の交差点であり、同じ言語を用いる。それは比例、素材、光、そして記憶によって成り立つ言語である。」
私はこれを受け、問いたくなりました。このデジタル主導の時代において、誰がDADAPUTÌAのようにすべてを自らの土地の育みへと注ぎ込み、独自のスタイルで咲き誇り、流行に流されることなく、喧騒の中で真摯な情熱と文化の厚みをもって、本当に理解する者たちに見出されているでしょうか。

ダダプティアを発見する

 

イタリア式エレガンスの極み、MARINA LORENZI

 

考えてみると不思議なことですが、デザイナーとの通話はまるで無言の時空旅行のようでした。特にMarina Lorenziとの対話は、ファッションの源流からゆっくりと展開する幻想的な旅の一幕でした。画面の向こうの彼女は落ち着いて冷静で、話し方もゆっくりとしていました。最初は、彼女がただインタビューに慣れているだけだと思っていましたが、通話が終わった後、チームから聞いたところによると、電話を切った瞬間にMarinaは涙を流していたそうです。自分が築き上げたブランドが、いつの日か真に理解されることなど、彼女はこれまで考えたこともなかったのです。このような意外な一面を知って私は衝撃を受け、また彼女の通話中のほとんど冷静とも言える落ち着きが、実は長年の待望による優しさであったことを深く感じました。

 

Marina Lorenziはイタリアのファッション企業出身であり、若い頃は一流のラグジュアリーブランドでデザイナーを務め、40年以上のキャリアを積んでいます。Marinaはイタリアで最も有名かつ権威あるデザインスクールであるIstituto Marangoni（イストゥイト・マランゴーニ）に在籍していました。これにより、彼女のファッション産業への理解は非常に正確でありながらも温かみを持っています。豊富な経験を持つ観察者として、流行と技術がせめぎ合う激流の中で、最も純粋な言葉を通じて自身の美の定義に応えています。

そして彼女は数十年にわたる輝かしい年月を、自身の名前を冠したブランドMARINA LORENZIを通じて世に示しています。しかしそれは過去の経歴を誇示するためではなく、イタリア女性の日常生活に潜む感動――革の質感、手仕事の細部、そして優雅なスタイルの記憶――をデザインに具体的に表現しているのです。またMarinaは、世代や国籍を問わず、多くの女性に愛され理解されることを願い、スタイルが年齢や言語の枠を超えることを目指しています。

 私が初めてそのバッグに触れたとき、その触感と重みは忘れがたいものでした。私は初めて知りましたが、バッグの一つ一つのリベットや金属パーツでさえ、Marinaがゼロから手作業でデザインし作り上げたものだということを。指先でオーダーメイドのレザーの表面をそっと撫でると、その柔らかさは絹のように滑らかで、バッグを手に取ると、洗練された金属飾りが光の屈折によって繊細な輝きを放ち、落ち着きと重厚感を感じさせます。バッグのフォルムはサドルバッグのクラシックな輪郭を融合させ、比率と構造の正確な把握によって、一つひとつのバッグがまるで小さな芸術的建築のようであり、シンプルの中に深い緊張感と細部が込められています。彼女はかつてこう語りました。「私にとってハンドバッグは単なるアクセサリーではなく、記憶や意味、そして優雅さを宿す、着用できる建築物です。」この言葉に私は強く共感しました。Marina Lorenziの作品には明確なロゴはありませんが、構造、光と影、質感の交錯によって、彼女独自の印を刻み込んでいます。だからこそ、バッグを手に取り、また置くたびに、時間に磨かれた執念と優雅さを感じるのです。

マリーナ・ロレンツィを発見する

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これらの遠隔対談は、まるでインスピレーションが花開く花火のようであり、何度も私の創作の本質についての思索に火を灯しました。どのデザイナーの物語も、ある種の才能やインスピレーションは複製できないものであり、それは血の中から流れ出る文化的記憶と感情の継承であることを私に気づかせてくれました。彼らがデザインしているのは単なるバッグではなく、彼らがどのように生き、どのように世界を理解しているかの表現なのです。だからこそ「イタリア製」がこれほど魅力的であり、それは日常と文化に深く根ざした精神的信仰なのです。たとえ外観が同じ２つのバッグを手に取っても、ステッチの処理や革の質感、さらには金属の表面にわずかな違いがあることで、まったく異なる個性を持ち、それは職人たちが手で刻み込んだ技術の痕跡なのです。わずか数回の通話だけでは全貌を知ることは難しく、数名のデザイナーは私を故郷や工房に招き入れ、背後にある文化的ルーツをより深く理解させてくれました。私は信じています。読者がこれらのバッグに直接触れ、革の重さや細部を感じるとき、これまでとは違った感覚を抱くことでしょう。おそらく次回イタリアを訪れるときは、ただ写真を撮り観光するだけでなく、魂に触れる工芸の旅となるはずです。そして私は、そう遠くない未来にこれらのデザインが台湾の街並みに溶け込み、日常の風景の一部となることを願っています。

 

何度か深く交流を重ねて、ようやく私は理解しました。Vetrinamiaは突然生まれたわけではありません。その誕生は、CEOのKate Changが長年ヨーロッパ各地を旅しながら観察し、体得したことに由来しています。シリコンバレー出身で、世界中で10年以上の投資経験を持つプロフェッショナルであるKateは、イノベーションやブランド価値の判断に非常に鋭敏です。しかし、彼女の行動を真に動かしたのは、イタリアの若いデザイナーとの出会いでした。「大手ブランドのもとで働くことは決して容易ではないが、それがゆえに創作が機械的な公式のようになってしまった」という話を、彼女は旅を重ねる中で何度も聞きました。イタリアやフランスの小さな町に潜むデザイナーや職人、ブランドたちは、舞台が足りず、世界とすれ違ってしまっているのです。そこで彼女は、もはや傍観者でいることをやめ、本当に才能と魂を持つ作品が見られ、理解され、大切にされる場を作ろうと決意しました。

そしてVetrinamiaの台頭は、この文化と質感の潮流の縮図そのものです。高速で回転する現代にあって、Vetrinamiaはあえて歩みを緩め、真に見るべき価値のある作品を時間をかけて選別しています。イタリア、フランス、スペインなどからの独立系デザイナーブランドを新たな市場へと紹介するプラットフォームとして、卓越したクラフトマンシップを持つブランドが、ラグジュアリーブランドの影に埋もれることなく輝ける場を提供するだけでなく、デザイナーたちが独自のストーリーと創作を世に示すための必要な支援も行っています。

当初は単なる好奇心から、プラットフォームの実際の影響力をより深く知りたいと思い、特にバックエンドのアクセスデータを見せてほしいとお願いしました。創業者はほとんど躊躇なくShopifyの管理画面を開きながら、「見ることに制限はない。開けて見ればわかるよ」と笑いながら言ったその場面は、今も鮮明に記憶に残っています。

私たちが7月18日に初めて通話をした後、プラットフォームの1日あたりの訪問購入者数は急速に増加しました。執筆時点で私が見たデータは約13,000人の訪問でしたが、わずか数日で55,000人を突破しました。さらに最新のデータでは日間流量が95,000人を超えています。重要なのは、これらが単なる浮動的な無効訪問者ではなく、ブランドが広告を通じて意図的に精査し導入した高い購買意欲を持つユーザーである点です。彼らはクリック前に価格、素材、産地を明確に把握しており、本当に購入準備が整った顧客です。

共有されたバックエンドデータによると、毎日約2,200人の台湾からの訪問購入者があり、この数字は安定して成長を続けています。これはブランドとプラットフォームの現地での魅力と浸透力が私の予想を大きく超えていることを示しています。このすべては単なるソーシャルメディアの人気や大量のフォロワー数に依存した表面的なものではありません。Vetrinamiaのマーケティング戦略の成功の鍵は、ソーシャルがスタート地点である一方、顧客をブランドの公式サイトへと確実に誘導し、より深いブランド関係を築くことにあるのです。

とはいえ、Vetrinamiaの道は順風満帆ではありませんでした。初めて価格を明示した広告を打った際、サイトの流量は一時50％以上も減少しました。しかしチームはそこで退くことなく、これは無効なターゲットをふるいにかけ、潜在顧客に絞り込むための必要なプロセスだと確信しました。その結果、わずか3週間足らずでデータは回復し倍増し、この近道を使わず戦略的に着実に進めるやり方こそがブランドを国際的に確立する鍵であることを証明しました。

華やかな数字だけでなく、Vetrinamiaはアジア市場でも徐々に認知度を高めており、特に日本では『毎日新聞』『JJ』『Story』『Crea』『Ray』『Isuta』など多数の有力メディアから短期間で積極的に取材·紹介されています。こうした注目と評価は外部からの後押しだけでなく、プラットフォーム自身の価値と可能性を裏付けるものです。

これにより私はVetrinamiaへの信頼を深め、より多くの優れたデザインを推進し、世界中の愛好者にとっての第一選択のプラットフォームとなり、イタリア現代工芸の国際的発信の新たな可能性となることを期待しています。