パレルモは私たちの故郷であり、イタリア・シチリア州の州都です。長い歴史の中で数多くの文明や民族が交差したこの街は、豊かな芸術的・建築的遺産を誇ります。古代フェニキア人はこの地を「Zyz(ジーズ)」と呼び、「花」を意味していました。現在の「パレルモ」という名前は、古代ギリシャ語の「πᾶς(pâs=すべて)」と「ὅρμος(hórmos=港、大きな港)」に由来しています。これは、ケモニア川とパピレト川という2つの川が作り出した大きな天然の港が存在したためです。ローマ時代には「パノルムス(Panormus)」と呼ばれ、アラブ時代には「バラルム(Balarm)」と発音され、ノルマン時代には「バレルムス(Balermus)」という形で正式名称に採用されました。
2015年には、「アラブ・ノルマン様式のパレルモと、チェファル、モンレアーレの大聖堂群」がユネスコ世界遺産に登録されました。これは私たちにとって非常に誇らしく、また大きなインスピレーションの源でもあります。金の豪華さや多彩なモザイク模様は、私たちのドレスに使われる上質なシルクや、装飾・刺繍が施されたクラッチバッグにそのまま表現されています。
シチリア――歴史、芸術、自然、伝統、唯一無二の風味と色彩。それは数多くの民族がこの地を通過し、影響を与えてきた文化の交差点です。その地理的な位置のおかげで、シチリアは地中海世界の歴史の中で常に重要な役割を果たしてきました。ギリシャ人、サラセン人、ノルマン人、シュタウフェン家、そしてスペイン人まで――さまざまな時代と民族がこの地に足跡を残しました。
この地域は社会的にも地理的にもコントラストに満ちています。透き通った青い海、緑豊かな海岸線、砂浜と岩の両方がある自然環境、そして時には砂漠のような乾いた地域――そうしたすべてが、尽きることのない発見と創造の源となっています。
パレルモはまた、フォークロア(民俗文化)の街でもあります。街を歩けば、鮮やかな黄色、オレンジ、赤の果物で彩られた歴史ある市場や、伝統的な職人が今も営む古い店舗に出会えます。そこでは、シチリア名物の馬車「カレット」や、シチリア産の小型ヤシの葉を手作業で編み込んだ「カフェ」と呼ばれるバッグなど、伝統が生き続けています。
パレルモには歴史的・建築的価値の高い建造物も数多く存在します。ヨーロッパ有数の劇場である「テアトロ・マッシモ」や「ポリテアーマ劇場」、市庁舎のある「プレトリア広場」などもその一例です。市内中心部にあるモニュメントや、パレルモ全域に点在する歴史的な別荘、監視塔、マグロ漁の施設、岩絵、古代教会や貴族の邸宅も見逃せません。
また、ユネスコ世界遺産に登録されている建築群も見どころです。たとえば「ノルマン王宮とパラティーナ礼拝堂」、「サン・ジョヴァンニ・デッリ・エレミティ教会」、「サンタ・マリア・デッラ・アミラーリオ教会(マルトラーナ教会)」、「サン・カタルド教会」、「パレルモ大聖堂」、「ジーザ宮殿」、「アミラリオ橋」など、いずれもアラブ・ノルマン様式を代表する貴重な建造物です。
そして、パレルモと食――それは何千年にもわたる愛の物語。地元のガストロノミー(美食文化)は、街の歴史と支配者の変遷とともに発展してきました。典型的なシチリア料理の多くは、ローマ、アラブ、フランス、スペインといった文化の影響を色濃く受けています。そのため、シチリアのレシピ集には、豊かな土地で育まれた唯一無二の風味と特性をもつ農産物の味がふんだんに詰まっています。